「路 上」（原題：On the Road)とは、1940年代後半のジャック・ケルアックとニール・キャサディの交流を描いた自叙伝的小説です。1951年には完成されていたといわれて いますが出版されたのは1957年になってVikingPressによって発行されたのが最初でした。
登場人物はそれぞれが特異な個性を持っ たキャラクターとして描かれていますがその大部分は実在のケルアックの友人たちがモデルとされています。その一人一人がビート・ジェネレーションと呼ばれ る文化の先駆者であり、なかでもジャック・ケルアック、ニール・キャサディ、アレン・ギンズバーグ、ウィリアム・バロウズ等は今も戦後文化の先駆的人物と して語られています。
「路上」では1940年代後半から1950年初頭の間のケルアック（サル・パラダイス）とキャサディ（ディーン・モリアー ティ）の出会いから、アメリカ中を幾度となく横断する間に起こるさまざまな出来事が描かれています。先にも述べましたとうりこの小説は自叙伝的小説で出来 事や登場人物の多くは実際のものであり、小説中のディーンの突飛な言動は今も伝えられるニール・キャサディの人物像を詳細に描いています。ディーンの破天 荒な情熱に魅了されながらも常に客観的に見つめるサルの心情もケルアックという人物を知るものとなっています。
一方でウィ リアム・バロウズは後年のインタビューで「キャサディはケルアックの小説で作り上げられたキャラクターだ」と述べ、キャロライン・キャサディも2002年 のインタビューで「ケルアックの小説はニールの人物像を歪曲してる」との趣旨の発言をしています。しかし、いずれもケルアックやキャサディを最もよく知る 人物の一人であり、小説や伝記等のみからビートの先駆者を知る現在の人々の間違ったイメージや期待に対して向けられたものであるとも取れます。
いずれにしても現在の私たちは一文化を形作ることになる人々の経験を「路上」を通じて体験することができます。
